新聞配達と自衛官
はじめに
突然だがこのブログを読んでる方の中で新聞を読んでる方はほぼ確実に何名かは居るだろう。
朝日新聞、讀賣新聞、日本経済新聞、産經新聞、毎日新聞etc…
さて、無論その新聞を届けるには各社の新聞配達員が存在している。
つい最近、ネットニュースでこの様な記事を目にした
gendai.ismedia.jp
新聞配達はブラック職としてかなり有名になってるが、それが遂に表層化してきたという形だろう(新聞社は自己批判につながるので書けないが)
自分もその一人として現在某新聞社の嘱託社員として勤務しているが、勤務して一つ気がついたことがある。
それは異常なまでの元自衛官率の高さである。
自分が勤務しているのは全職員合わせて12名程度の小さな営業所なのだが、そこに自分を合わせて3名の元自衛官(自分は厳密に言うと違うが)が働いている。
他の弊社営業所に問い合わせてもだいたい1営業所に一人か二人はいるらしい(画像は某就職サイトより)
なぜ、新聞配達にここまで元自衛官が集まるのだろうか?
ということで、この記事ではいくつかの項目に分けてその理由を分析していきたいと思う。
1,薄給への耐性
新聞配達の給料は想像以上に少ない。
営業所の利益によって若干の差はあるものの、大体14~20万の間で基本給が推移している(なお自分の営業所は小さいので16万)
当たりの営業所を引くと食費支援や特別勤務手当などが付く場合もあるが、殆どつかないので食費やその他生活費などを差っ引くと大体月に残るのは4~7万弱になる。
さて、ここで自衛隊の初任給を見てみよう
http://www.mod.go.jp/pco/obihiro/top/kyuyo.pdf
新聞配達員にしろ自衛官にしろ一般(娑婆)の給料と比較してもかなり金額が低い事がわかると思う(無論自衛官には勤務年数及び勤務評定によって定められる棒給制度が存在し勤続年数に連れて俸給は上がるが)
このことから自衛官は娑婆の給料と比較して薄給の職場でも、比較的耐性をもって勤務し続けるのではないかと考察できる。
2,保有資格の民間での可用性の低さ
自衛隊では職種によって「MOS(Military Occupational Speciality、特技区分)」といった自衛隊内で通用される各種資格がある。
例えば普通科中隊迫撃砲小隊所属なら迫撃砲のMOSを持ち、部隊電信員なら陸曹教育隊で部隊通信員のMOSを取得し部隊配属…といった形だ。
さて、このMOS。「Military」と付いているからには軍隊(自衛隊)でなければ役に立たない資格が多すぎる。
軽火器MOSやSSM(地対艦ミサイル)射撃統制MOS等むしろ民間でどこで使うのかといった資格ばかりだ。
無論、測量や部隊無線通信、装輪操縦などはそれに付随する公的資格、免許等の取得が必要になるため、そういった場合には民間でも使える資格は取得できる。
が、一覧を見ていただければ分かるように殆どの資格は民間での可用性が限りなく低い。
http://www.clearing.mod.go.jp/kunrei_data/f_fd/1964/fy19650318_00110_001.pdf
さて、こうなると困るのは除隊することになった自衛官だ。
一応「就職援護」といった形で公的資格を得る機会を部隊から与えてもらえることもあるのだが、その対象者はあくまで任期満了者、定年退職者に限られる。
自分の営業所に居る元陸上自衛官が3等陸曹に昇任した後に除隊したせいで、まさにこの制度の割りを食った形で資格取得の機会が殆ど無いまま次の就職先を探すこととなってしまい今ここにいる。(3曹以上の曹や幹部は定年まで居ることが前提となっているのでまぁ自己責任と言ってしまえばそれまでなのだが)
その結果として、原付免許さえあれば軽い障害があっても雇用する新聞配達員となった(もっと言うとならざるを得なかった)のではないだろうか。
3,給与体系及び住宅環境の類似性
あまり知られていないが、新聞配達員は翌月の月給からの天引きといった形で給料の前借りができる。
底辺労働者の例に漏れず、新聞配達員の中にもパチンコ、スロット、競馬などのギャンブルで給料をスってしまう人間が後を絶たない。
そして残念なことに人間の精神は長い困窮に耐え切れるほど頑強ではないらしく、過去に自分の営業所で金銭の窃盗事案も発生してる他、別営業所では強盗なども発生したりしている。
このような金銭がらみのトラブルを防止するための前貸し制度なのだが、自衛隊ではこれが消費者金融からの借金に変質してほぼ同じような体型が存在している。
また、自分のところでは月数千円(立地条件を考えると格安だが)の家賃、光熱費徴収があるが、他の営業所では存在しないらしい。
自衛隊ではこれは「住居及び被服、糧食の現物支給」といった形で俸給に含まれているそうだ。
ここからも類似性が読み取れるのではないだろうか。
おわりに
以前、自分の担当区域外の不着(新聞が届いていない)連絡を受けて配達をしに行った際に顧客の方からこのようなことを言われた。
『人の金で紙ゴミを配る寄生虫』と。
また、自衛隊も過去に「給料泥棒」などと蔑まれていた時代がある。
自衛隊と新聞配達が同じとは言わないし、言えない。仕事の重要度合いだって違う。
しかし、自衛隊や新聞屋、その他職業で働いている人間もみな貴男、貴女と同じ血の通った人間であることを新聞を手にとった時ふと思い出していただければ嬉しい。
以上で考察を終了する。