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大韓民国軍国防計画2020について

最近は全く学術的なことをつぶやかず低俗なことばかりツイートしてたので(飯が美味いとか仕事に行きたくないとか)久しぶりに学術的な文章を書こうと思い記事を起こしました。

今回の題目は我が国の隣国である大韓民国にて起案された国防計画2020についてです。

大韓民国国軍についての概要

1948年8月15日創設、総兵力は常備軍約63万9000人、予備軍約427万人(2014年現在)。
内訳は陸軍(2012年12月現在)50万6000人、海軍(2014年現在)6万9000人(内海兵隊員2万8000人)、空軍(2010年11月現在)6万5000人。
米国式に海兵隊は海軍の隷下にあるが、予算は13年度より海兵隊独自予算権が与えられた。
2012年に戦時作戦統帥権が韓国側に移譲される予定であったが、浦項コルベット艦「天安」撃沈事件を受け延期され、2014年に2020年以降の確定という事実上の無期限延期が決定された。

 以上が大韓民国国軍の概要となります。
さて、題目とした「国防計画2020」とは何か。
簡単に説明すれば「将来的先進精鋭防衛の為の長期的国防改革案(無闇矢鱈に横文字を使わないところが某社より好感持てる)」です。
2020とついているのですが基本指針は2005年、発表は2008年に行われたもので現在進行形で実施されています。(進捗はさておき)

まぁここまでは良いんですが一言で言えば「予算的都合で全体的に縮小させつつ、機械化や新機材導入で『機動的防衛』を目指します」といったどこかの島国の防衛組織で見たような内容になっています。
では重要な部分を掻い摘んで内容を見てみましょう。(自分の訳無しで詳しく見たい方用のWiki국방개혁 2020 - 위키백과, 우리 모두의 백과사전、NamuWiki→국방개혁 2020 - 나무위키)

また、現在は国内外の安保情勢の変動を受けて「国防計画基本案(2012~2030)」、通称『国防改革307計画』に変更され内容も若干変更されているため、変更部位に関しては脚注を入れています。

  • 現行法令である「国防改革に関する法律施行令」(施行2011年7月1日)上にもまだ50万人選任を明示している。
    • 国防部長官は、2020年までに国軍の常備兵力規模を50万人水準に維持するために、その常備兵力規模を年次的に削減し、2010年までに64万人レベル、2015年までに56万人レベルになるようにしなければならない。*1
    • 2020年までに維持しなければならない各軍別構成比率は次の通りである。
  1. 陸軍:74.2%
  2. 海軍:8.2%
  3. 海兵隊:4.6%
  4. 空軍:13%
  • また、女性軍人の構成比率は、2010年までに士官(幹部)4.4%、副士官(下士官)2.9%から2015年までに士官5.7%、副士官4.1%に拡大しなければならない。*2
  • 士官、准士官、副士官など幹部の規模は、2020年までに技術集約型軍構造改編と連携して、年次的に各軍別常備兵力の40%以上で編成しなければならない。*3
  • 予備軍戦闘力の向上に必要な武器・装備・戦闘予備物資を2020年までに確保するように必要な措置を講じなければならない。

女性の社会進出に配慮しつつ、兵力削減を行い、かつ基幹的兵力の確保のため下士官・士官を増やそう…といった内容ですね。
実際日本においても普通科連隊の規模が縮小されたり、即応予備自衛官による連隊編成(コア部隊化)といった似たような取り組みは行われています。(成果はイマイチよくわかりませんが…)

では、次に陸軍の改革案を見てみましょう。

陸軍

  • 軍団と師団の大幅統廃合や機動力、打撃力、生存力の強化、17万7千人の削減*4
  • 前方軍団の削減と作戦半径が大幅に拡大された機動軍団創設*5
  • 地上作戦司令部(2015年計画。第1野戦軍司令部と第3野戦軍司令部を統合)と第2作戦司令部(2009年改編完了)創設。
  • 専門軍曹の割合の増加と徴集兵の割合を60%に縮小。

うーん手厳しい。機動力の強化を謳ってはいますが実質的な大幅削減ですね。
前方軍団に関しては第6軍団、第8軍団が解消される上、何故か「機動力の強化」を謳ってるのにも関わらず第8、第11、第26機械化歩兵師団解消

理由は『北朝鮮の軍事力低下により局地戦の可能性が高まったため』とのことですが、じゃあ機動力の増強とは…
ココらへんはどこかの島国の「動的防衛能力獲得」にも似た何かを感じますね…

では続いて海軍の改革案です。

海軍

  • 韓半島全海域の監視と打撃能力を確保。
  • 潜水艦戦団と第6航空戦団を潜水艦司令部と航空司令部に格上げ。*6
  • 機動戦団編成。(2010年創設完了)

また沿岸警備業務を海軍から海警(海洋警察庁ではなく後継組織の国民安全処海洋警備安全本部) に2021年を目処に移管することや、イージス艦を3隻追加購入、特殊戦戦団を一部改変し特戦戦隊1個を創設することで局地的挑発や非対称戦闘への対処能力を高めるなどの改革がなされています。(ちなみにNamuWiki曰く潜水艦の増強は北韓だけではなく、中国や日本との海洋主権の問題が絡んでるらしいよ)

この次は空軍の改革案です。

空軍

  • 北部戦闘司令部創設。(2010年12月23日に創設完了)
  • 戦闘機の削減(Lowレベル500機をHigh-Low Mixで420機に)、空中給油機と空中早期警報・統制機(AEW&C)の導入

またこの他にも中・高高度無人機や映像・情報電子機器等を運用する航空情報団を編成。
半島上空を飛翔する人口衛星活動の監視任務を実施する衛星監視制御隊が新編されます。
どうやらイスラエル軍のような「航空宇宙軍」を目指してるそう。
High-Low MixのHighはF-35で確定なのですがLowをどうするのかがよくわかりませんでした(リサーチ不足)

では常備軍としては最後になる海兵隊の改革案です。

海兵隊

  • 大隊級で旅団級への上陸能力を確保。

 海兵隊の場合、コレより他のことがミソでまず済州島に駐留していた第9海兵旅団が大幅に増強され独立旅団化、また第6海兵旅団及び延坪島部隊も増強され西北島嶼防衛司令部に指揮権が一括されるなど天安撃沈事件や延坪島砲撃事件の際の対処の遅れを教訓とした改編が行われました。陸海空海兵の合同部隊も創設しようとしたらしいけど例の如く石頭の人たちが反対したので頓挫

また海兵隊司令部隷下に航空部隊を創設することも検討されており、ゆくゆくはアメリカ合衆国海兵隊のような独立して任務を遂行できる組織への変革も夢じゃない(予算が出れば)と、今後に期待できそうな拡大が行われる予定です。

最後に予備軍の改革案です。

予備軍

  • 平時と戦時の動員体制の改善。
  • 300万人から150万人に、大規模な兵力削減と精鋭化。(2009年から補充役の動員指定を解除)
  • 予備軍期間3年短縮推進(8年から5年で)、適切な報酬支払いの対策を講じる
  • 1〜4年目現役出身の「予備役」の中で、大学や特殊職場(教師など)に従事していない人を対象に、1年に1回「動員訓練」を期間を従来の2泊3日で2016年〜2019年には、3泊4日、2020年からは4泊5日の拡大。
  • 予備軍戦闘力の向上に必要な武器・装備・戦闘予備物資を2020年までに確保するように必要な措置を講じなければならない。

予備軍の大規模削減によって、有事に常備師団のバックアップ予定になっていた動員歩兵師団が現在の8個師団から4個師団に半減する予定。(郷土予備師団はそのまま)
また徴兵制度の変更も行われる予定で、2022年までに補充役制度は廃止され「現役」と「第2国民役」の2つに分類されることとなりました。(その他は徴兵解除)
あと最後の「予備軍戦闘力の向上に必要な武器・装備・戦闘予備物資の確保」ですが、現状では多分小銃のM16からK2への更新が精一杯なのではないかなぁ…とは正直思いました。(日本も予備自衛官の武器、装具の更新が整ってないのを見てる分余計に)

 

以上が大韓民国軍国防計画2020、国防改革307計画の内容となっています。
もう少し詳しく知りたい方はWikiを翻訳したりGoogleに聞いてみて下さい。(機械化による動的防衛能力の向上も一応はやってるよ)

おわりに

やはり、調べてて感じたのは日本と同じで韓国でも予算の問題や少子化問題による兵力不足などがあり、同じように「動的防衛能力」を謳って体よく縮小していく…
その姿にはある種の親近感すら覚えました。

今後中国等の圧力が高まった際、縮小した兵力でどのように立ち回るのか…若しくは国が消滅するのか
そうならないためにどうすればいいか、が今後の我が国、そして韓国での共通課題であるなと感じます。

以上で韓国の国防計画2020に関する解説を終了したいと思います。ご拝読ありがとうございました。

*1:最終的に2022年までに52万2000人までの削減、2030年までは50万人体制で以降の削減はしないことで確定した模様

*2:女性士官、副士官構成比率は307計画においてそれぞれ7%、5%に更に広がりました

*3:最終的に42.5%で確定。士官は7万1000人から7万人に減少、副士官は11万6000人から15万2000人へ増員

*4:ただ流石に17万はやり過ぎと批判され11万人の削減(2018年までに3万人、2022年までに8万人を削減する予定)になりました

*5:現在の第7機動軍団はそのままに、首都防衛司令部を含めた8個ある軍団を2020年までに7個軍、2030年までに6個軍に削減予定

*6:潜水艦司令部は潜水艦を18隻追加配備し2015年に創設完了、航空司令部は現在も未完